このページでは発達障害や知的障害を持つ子どもたちにとって、安全で安心して過ごせる環境を提供するには絶対必要な鍵関連の情報をまとめております。ご家庭、専門施設運営者共にご覧いただければと思います。
ご家族がよく遭遇する鍵のトラブルと対処方法
玄関や施設の鍵を勝手に開けてしまう
なんといってもダントツの相談件数となります。障害児を見守るご家庭や、専門施設では、勝手に子供達が外に出て危険な目に遭わないように鍵を施錠しています。しかし、ワーキングメモリーに課題がある子でも知的レベルが高く、鍵をかける動作を瞬時に真似て学ぶことで、自ら鍵をあけて飛び出してしまう恐れがありお困りのご家庭や施設が多いと承知しております。
特に鍵をあけたあと、目の前が道路になっている場合は二次被害を生み出さないためにも、注意と専門的な対策が必要になります。
対処方法としては、室内側に鍵穴のついた補助錠を取り付けることです。室内側に鍵穴を向けることで、鍵が無いと室内から勝手に出られません。注意点として、室内ドアの鍵だけではなく、窓を施錠する錠前も鍵付きのものに変えないと効果は得られません。また、室内をきちんと子供にとって快適な空間にしておくことが重要です。
室内側に鍵開けを付ける方法として、徘徊防止用の鍵などを取り付ける方法があります。鍵を付けるためにドアに穴を開ける必要がない物もあるので、こういった製品が取り付けできるドアならオススメです。
よく使われるのはKABAというメーカーのセーフティサムターンという製品です。この製品は鍵で空転モードのオンオフを切り替えることができるため、空転モードをオンにしておけば、室内からは鍵を持っている人でないと鍵を開ける事ができません。
鍵を締め忘れてしまう
自分が鍵をかけたかどうかをすぐ忘れてしまったり、鍵を持っていき忘れてしまったり、鍵を鍵穴にさしたまま外出してしまう事があります。自動施錠の電子錠などを取り付けることで締め忘れは防止できますが、鍵自体を持っていくのを忘れると家から締め出されてしまい却って問題が大きくなります。キーリールを腰に付けて常に鍵を手放さないようにするという方法もありますが、キーリールの取り付け自体を忘れてしまうことになります。
この問題の対処方法ですが、残念ながら鍵単体やガジェットの活用でどうにかできる問題ではなく、ご家庭でしっかり管理することが重要です。
鍵をなくしてしまう
こちらもよく受ける相談の一つです。毎日鍵を無くしてしまうお子様も過去にいらっしゃいました。障害児が鍵をなくしてしまう原因は様々ですが、完全に防ぐのは難しいです。そのため、鍵を失くさない方法を考えるのはもちろんですが、鍵を失くしても問題がないようにすることが重要です。
個人のお客様から、子供が頻繁に鍵をなくしてしまい、頻繁に鍵交換をすると経済的に厳しいため何とかしたいとご相談をいただきました。
- 子どもが鍵を無くす
- 鍵を持っていくことも忘れる
- キーファインダーなども付けて効果はあったが、鍵ごと車に踏まれたのか壊れてしまう事があった
鍵を持っていくこと自体がリスクとなる状態だったため、テンキーとカードキーで運用するタイプの電子錠をご紹介しました。テンキーで運用すれば鍵をなくす心配もなくなりますし、カードキーで運用すれば万が一鍵をなくした場合でも、その場で鍵の抹消と再登録ができます。わざわざ鍵交換をしなくてもセキュリティが確保でき、鍵交換の費用もかからないため経済的にも優しい錠前です。
鍵に位置情報を発信する装置を付ける
鍵に「キーファインダー」という製品を付けることで鍵の位置を調べられるようになります。ただし、鍵の近くに行かないと場所が分からない製品が多いので、どこへ行った時に鍵を失くしたのか知っておく必要があります。
ただし、iPhoneなどのApple製品を使っている場合は、キーファインダーではなくAirTagという製品がオススメです。iPhoneにはインターネット上から自分のiPhoneの位置を検索できる「iPhoneを探す」というサービスがあるのですが、AitTagを鍵に取付けているとこの「iPhoneを探す」から鍵の位置も調べられるようになります。AirTagは近くに他人のiPhoneが通った時にGPS情報を発信してくれるため、遠隔でも位置情報が分かり、非常に優れています。
鍵をなくしてもすぐに鍵を再発行する方法
鍵を失くしてしまった時に、鍵を交換するという方法もありますが、鍵屋に依頼しなければいけないため時間もかかりますし、費用もその度に何万円もかかってしまいます。そういった手間や費用を抑えるために、電子錠を取り付けることをオススメします。
電子錠ではテンキーやカードキーで鍵を開け閉めすることができるのですが、自分でカードキーの削除や登録をすることができます。錠前を交換せずにカードキーや番号だけ交換すれば良いので、すぐに対応できて数千円で鍵を復旧させることができます。
作業内容 | 費用イメージ |
---|---|
鍵穴の新規取付 | 30000円~50000円 |
ギザギザした鍵の交換 | 15000円~25000円 |
ディンプルキーの交換 | 25000円~35000円 |
電子錠の取り付け | 50000円~120000円 |
過去に相談を受けた事例
発達障害の子が勝手に施設の外に出ないようにしたい/放課後等デイサービス事業者
発達障害児の通所施設から以下のようなご相談をいただきました。
- 子供たちがとにかく鍵を開けたがる
- テンキーで開け閉めする錠前を導入したが、子供が番号を覚えてしまう
- 高い位置に設置すると、なんらかの(想定を超える)体当たり的な方法でどうにか高い位置へ行こうとするので逆に危ない
- 室内側に向けて鍵穴を設置し、都度施錠をすると事務所やバックヤード、トイレ等の往来が頻繁にあり現実的ではない
- それでも飛び出して防止策として何らかの鍵は必要
こういった状態ですと、室内側に向けて鍵穴やそれに類する機能を取り付けて、鍵を使うよりも職員が簡単に施解錠をできるようにする必要があります。
こんな時に使えるのがカードキーを使って開け閉めできる電子錠です。職員が出入口を使う際は、首にぶら下げたカードキーを使って開け閉めをすることで簡単に出入りができますし、子供の出入りは制限することができます。また、電子錠ならオートロック機能が搭載されている物が多数あるため、施錠忘れをなくすことが出来ます。
関連する法律を紹介
施設運営者であれば気になるのが、監禁状態になるのでは?といった懸念点が残ります。
刑法220条は、「人を監禁した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。ただし、同意による監禁は罰しない。」
この条文により、他人を無理やり閉じ込めた場合には、刑事罰が科せられます。内側から鍵を使用しても、同意のない閉じ込めは監禁罪に該当する可能性があります。
しかし、障害児向けの通所施設において、内側から鍵を使用することは、事故や危険を防ぐために必要な措置である場合があります。このような場合には、内側から鍵が監禁罪に該当するかどうかは、具体的な事情によって異なります。
具体的には、内側から鍵をかける場所や方法、かける時間、理由、その他の事情などを考慮する必要があります。たとえば、障害児が誤って施設外に出てしまうことを防ぐために、内側から鍵を使用する場合には、必要な限度でかけることが許容される可能性があります。
ただし、内側から鍵を使用する場合には、施設の運営者は、その理由や方法、時間などを明確にし、適切に管理する必要があります。また、内側から鍵をかけることが監禁罪に該当しない場合でも、権利侵害や虐待などの疑いがある場合には、法的な責任が問われる可能性があるため、注意が必要です。
権利侵害に該当する可能性を残す、注意すべき4パターン
自由権の侵害(憲法14条、刑法35条)
内側から鍵をかけることによって、障害児の自由権が侵害される可能性があります。自由権は、人間らしい生活を営む上で重要な権利であり、内側から鍵をかけることによって、不当に制限されることは許されません。
憲法14条
憲法第14条は、法の下の平等の原則を定めています。この原則に基づき、あらゆる人は、人種、信条、性別、社会的身分、門地、出自、財産、教育、年齢その他の理由による差別を受けることなく、法の下に平等に保護される権利を有しています。
刑法35条
人は、自分自身や他人を守るために、現在危害が及ぼされている場合には、その危害を防ぐために必要な限度を超えない範囲で、適当な防衛行為を行ってもよい。この場合、防衛行為が必要であったと認められる限度を超えた場合や、危害が終了した後でも継続して防衛行為を行うことはできない。
人格権の侵害(憲法13条、刑法35条)
内側から鍵をかけることによって、障害児の人格権が侵害される可能性があります。人格権は、人間らしい生活を営む上で欠かせない権利であり、内鍵をかけることによって、人格的な尊厳を傷つけることは許されません。
憲法13条
私有財産は、これの権利及び処分は、公共の福祉に適合するやり方で、これを保障することが、国民経済の健全発展に寄与するときは、これを尊重しなければならない。
教育を受ける権利の侵害(憲法26条、教育基本法4条、児童福祉法17条)
内側から鍵をかけることによって、障害児が施設内で教育を受ける権利が侵害される可能性があります。内側から鍵をかけたままで、施設内での学習や交流ができない場合、教育を受ける権利が制限されることになります。
憲法26条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
教育基本法4条
すべての国民は、文化的生活を営む権利を有し、かつ、そのために必要な教育を受ける権利を有する。この権利の保障に努め、すべての人々が、いつでもこれを享受できるようにすることは、国の責務である。
児童福祉法17条
保護者が児童に対して責任を尽くすことを怠り、その保護者が貧困その他の事情によって為すべき措置をせず、かつ第15条第1項又は第2項に規定する措置を受けることが必要であると認められる場合において、その児童の福祉の増進を図るために必要な措置を当該都道府県知事又は市区町村長が講ずることができる。
虐待の可能性(児童虐待防止法2条、児童福祉法33条、刑法220条)
内側から鍵をかけることが虐待に該当する場合もあります。たとえば、内側から鍵をかけたままで長時間放置する、不適切な理由で内側から鍵をかける、内側から鍵をかけることによって障害児に精神的な苦痛を与える、などの場合には、虐待として処罰される可能性があります。
児童虐待防止法2条
児童に対する身体的苦痛又は精神的苦痛を与える行為を行い、又は児童に対し虐待行為を行わせる行為を行うことは、禁止される。
児童福祉法33条
児童相談所は、児童福祉法又は他の法律の定めるところにより、又は都道府県の条例で定めるところにより、必要な事項について調査し、又は、家庭内外における児童に対する虐待又は育児放棄のおそれがあると認められる児童については、必要な支援を行うことができる。
まとめ
このページでは相談が多い3パターンと対策方法、施設等で内側から鍵をかけた際に、接触するであろう法律の記載をしてきました。ご家庭や専門施設問わず、願いはお子様の成長と承知しております。すべての教育や療育は環境の安全をベースに構築されており、「鍵を勝手に開けて飛び出してしまう恐れ」はプロの鍵屋に相談すべき事案なのはご承知の通りだと思います。こんな場合はどうしたらいいのか?漠然としたお悩みでもお気軽にご相談ください。